不動産売却で仲介手数料以外にかかる諸費用を詳しく教えて!
不動産売却に際して、仲介手数料以外にどんな諸費用がかかるのかを知らないと手残り金額の計算ができません。
おおよその検討をつける意味でも、資金計画を立てておきたいものです。
ここでは、不動産売却にかかる諸費用の詳細や値ごろ感などを解説します。
はじめに~不動産売却時の費用を説明する前に
以下の項目は、すべてのケースにあてはまるわけではありませんが、対象となる不動産の個別要素に起因するもの、また売主の個別事情によるものなど、ケースバイケースであることを踏まえて読み進めてください。
不動産売却時の費用|収入の部
売主は、売買代金のほかに固定資産税、またマンションなどでは管理費や修繕積立金の分担金を買主から受領します。
売買代金
①手付金:
目安としては、契約時に売買代金の10%相当額を手付金として受領しますが、この限りではありません。契約条件によっては、手付金の支払いが無い「代金一括決済」の場合もあります。
②残代金:
手付金を除いた残代金の意味です。
前述のように、代金一括決済という支払方法もあります。
売買代金以外の収入
①固定資産税(都市計画税)の分担金:
売買契約書の条文の中に、「公租公課の負担」の記載がありますが、固定資産税・都市計画税等の公租公課は、引渡し日の前日までを売主が負担し、引渡し日以降の分を買主が負担します。
仮に、残代金決済日を6月1日とした場合、5月31日までの分を売主が、6月1日以降の分を買主が負担するように納税額年額を日割り計算して売主に渡します。
このため、その年の1月1日現在の所有者である売主に届いた納税額は、通年分を売主が自治体に納めることになります。
②管理費、修繕積立金の分担金:
マンションは管理費と修繕分担金を、リゾート別荘地では管理費などが分担金の対象となります。
計算方法は、固定資産税の時と同様に日割り計算します。
不動産売却時の費用|支出の部
契約書に貼付する印紙代や仲介手数料、測量費のほか、不動産の性質や売主の事情によって掛かる費用項目が変わるので、しっかりチェックしましょう。
印紙代
売買契約書に貼付する印紙税です。
日頃の不動産取引では契約書の正本を1部しか作らないケースが主流で、買主が正本を、売主がその写しを保有するかたちをとっています。
そのため、契約書に貼付する印紙代は、売主と買主で平等に負担(折半)します。
契約金額によって印紙税額は異なりますので、詳しくは国税庁のHPにアクセスして、印紙税額一覧をご参照ください。
【参考】
国税庁「印紙税額一覧表(令和元年6月1日以降適用分)↓
https://www.tkc.jp/consolidate/tkc_express/2019/06/201906_00331
国税庁HP印紙税の手引↓
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/01.htm
仲介手数料(媒介手数料)
宅地建物取引業者が、依頼者一方から受け取る報酬額(上限)は上の表のとおりです。
表の意味は、200万円以下に5%を乗じ、200万円から400万円までの200万円に4%を乗じ、400万円を超える部分に3%を乗じ、それらを合計した額が報酬額の上限となります。
まずは、実際に計算してみます。
<計算例>
売買契約金額が1000万円の土地を成約した場合を例に、仲介手数料を計算します。
{(200万円×5%)+(200万円×4%)+(600万円×3%)}×1.1=396,000円(税込)
宅建業者は課税業者である場合が大半なので、仲介手数料に消費税10%(2019年12月現在)がかかります。
実務的には、契約金額が400万円を超えた場合は計算結果が同じなため、速算式を用いて求めています。
【速算式】
(1,000万円×3%+6万円)×1.1=396,000円(税込)
【参考】
国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)令和元年8月30日改正
https://www.mlit.go.jp/common/001307055.pdf
測量費
境界標(杭)が一ヶ所でも不明で、杭の存在が確認できない、倒れている、抜かれている状態や、測量の結果が数十年前の古いものである場合は、買主に対して売買対象となる敷地の正確な範囲を示せないため、土地家屋調査士に依頼して測量を行います。
売主には敷地範囲の明示義務があるため、売主の費用負担となります。お付き合いのある土地家屋調査士(測量会社)さんがいるなら、相談してみてください。
確定測量は以下の理由から実施せず、現況測量(俗に言う実測)が主流です。
確定測量には地積更正が伴います。
地積更正は、隣接地所有者全員から印鑑証明書を添付のうえ書面に同意を得なければならず、土地の地積が増加する人たちばかりなら喜んでハンコをついてくれるでしょうけれど、測量の結果、中には地積が減少する方もいるので、その方から同意をもらうことは現実的にほぼ不可能です。
つまり、同意を得られなければ、土地の売却を進めることができなくなるということです。
このような理由から、印鑑証明の提出が無く、現地立会いのうえ立会い確認書にハンコをいただくだけの「現況測量」が採用されているのです。
費用は敷地の規模、測量点数等の要素により金額が決定されますが、50坪程度の住宅地の場合で20万円前後です。
登記費用(登録免許税含む)
以下に該当するケースでは、売主側にも登記手続きが必要になります。
①登記上の住所が現住所と異なる
所有者本人が自ら行うのであれば、土地1筆、建物1棟の場合で印紙代の合計2,000円。土地家屋調査士に依頼すれば、15,000円程度かかります。
②相続登記手続きが未了で、不動産の名義が故人のままになっている
司法書士に依頼するとして、土地1筆、建物1棟の場合で8万円~10万円程度ですが、相続人が複数名いるときは増額になります。お付き合いの司法書士さんがいるなら、相談してみてください。
③数年前に増築したが、増築登記が未了
土地家屋調査士が担当します。費用は8万円前後です。
④現在は更地になっているが、取り壊した建物の滅失登記が未了
所有者本人が自ら行うのであれば、建物1棟につき印紙代が1,000円です。
土地家屋調査士に依頼した場合で、12,000~15,000円程度かかります。
⑤対象不動産に銀行の抵当権が設定されたままなので登記の抹消が必要である
ア)ローンの残債が無い場合:
ローン等がすでに完済している場合は、売主ご自身で金融機関に連絡を入れ、抵当権抹消のために必要な書類を交付してもらいます。
イ)ローンの残債がある場合:
売却代金の授受を、不動産の決済と同時にローンを完済する方法をとります。
まずは、売主ご自身が不動産の売買契約締結後に、「売却先が決まり、近日中に代金決済を迎える予定である」旨を抵当権(または根抵当権)を設定している金融機関に伝えます。
その際に、不動産会社の担当者名と連絡先、あわせて担当する司法書士の名前や連絡先等を伝えておくと、今後がスムーズです。
後日、司法書士または不動産会社の担当者が金融機関の担当者に連絡を入れ、手続きについて打ち合わせをしてくれます。
この抵当権の抹消については、司法書士に15,000円前後の費用を支払います。
ウ)売却代金でローンを返済しても、なお残債が残る場合:
原則、ローンが全額返済(完済)できない場合は、金融機関は抵当権の抹消に応じません。
そのため、このような場合は不動産を売り出す前段階で、金融機関と話し合いをする必要があります。場合によっては、「そもそも不動産を売却できない」恐れがありますので、十分に注意が必要です。
⑥「権利証」や「登記識別情報」を紛失してしまい、司法書士に「本人確認情報」を作成してもらわなければならない
司法書士に3万円~5万円支払います。
【参考】
国税庁登録免許税の税額表↓
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
その他費用
①既存住宅状況調査(インスペクション)費用:
既存住宅状況調査技術者の資格を有する者がインスペクション調査を行ないます。おもに一級建築士が担当することが多いです。住宅の床面積や規模によりますが、費用は5万円~10万円です。
②ハウスクリーニング代:
交渉や契約条件によって、必ずしも必要になるわけではありません。
例えば、買主がリフォームせずにそのまま入居を始める場合で、特に値引き交渉が無かった場合は、売主がハウスクリーニング業者に依頼して、きれいな状態で引き渡します。函館の相場では、一坪あたり1,700円~1,800円です。
③解体工事費:
古い家を取り壊して更地で売却する場合などに実施する工事のことですが、函館の場合で、当社がいつも依頼する解体工事業者の場合で、建物の床面積一坪あたり17,000円です。
建物本体の解体工事のほか、工事前の養生囲いや庭木の処分、コンクリート塀の撤去、都市ガスの閉栓、室内の不用品処分等が実際には必要になりますが、その場合は別途加算されます。
なお、室内の不用品処分は数回に分けて「粗大ごみ」として出すなど工夫をすれば、手間はかかりますが、支出を抑えることが可能です。
実際には、解体工事業者に現地確認のうえ見積書を出してもらわなければなりませんが、予算組みとして把握したい方は、坪2.5万円~3万円×建物延床面積で計算しておくとよいでしょう。
④引越し代:
まずは、引越し業者さんに見積りを依頼する際に、土日や引越しシーズンの繁忙期を除いて、作業日を引越し業者さんの都合に合わせてあげると、費用の割引に応じてくれます。現地確認に来てくれた担当者さんに聞いてみましょう。
ここで解説した不動産売却時の諸費用は、不動産物件自体の個別要素や売主の個別事情によって該当するものしないものがありますので、詳しくは依頼する不動産会社に助言を求めましょう。
【関連記事】
不動産売却はどこがいい?「失敗しない不動産仲介業者選びの秘訣」
売却時にかかる税金
実際に不動産を売却した場合、印紙税、登録免許税(※)、譲渡所得にかかる所得税・復興特別所得税、住民税、消費税・地方消費税(※)がかかります。※印の税金はかかる場合と掛からない場合があります。
不動産売却時にかかる税金の詳しい解説については、以下の記事を参考にしてみてください。
高値売却には理由がある。不動産売却成功のための関連記事

関連した記事を読む
- 2021/01/23
- 2021/01/23
- 2021/01/22
- 2021/01/22