失敗例から学ぶ、不動産査定額と売出価格の関係|売出価格の設定はココに注意!
不動産を売却する際に査定額をないがしろにして、中古一戸建ての売り出し価格を設定し、結果的には長期間売れずに値下げまで招いてしまった失敗例をもとに、査定額と売出価格の関係性や売出価格設定時に注意点について解説します。
査定額より大幅に、売り出し価格を高くしてしまった事例
かれこれ15年前の話です。
築15年の木造2階建て住宅、延床面積が132㎡(約40坪)の査定依頼を受けました。
物件の現地調査のほか、市役所や法務局、成約事例データの確認など、ひととおりの調査を済ませて数日後に完成した査定報告書を持参し売主宅へ。
この物件の査定結果は以下の通りでした。
土地建物査定額 1,800万円
売出価格の提案 1,800万円
建物は日当たりや通風が良く開放感のある間取り、また外構工事でお庭がきれいに整備されており、全体的な印象はとても良い物件です。
査定結果の説明を終え、売出価格の話になった段階で、「こんなに安いはずがない。どこを見てるんだ!」と急に売主の語気が強まりました。
私は、売主の気持ちに理解を示しつつ、査定の根拠や市場性のこと、それと同時に相場を逸脱した高値で売り出した場合のリスクについても、再度、ていねいに説明しました。
売主に上手に伝えられなかった私自身の未熟さもあり、結果的に、査定額を無視した2,000万円で売り出すことになったのです。
売り出しを始めて、実際の反響はどうだったのか?
最初の半年間は月に1、2件の問い合わせで内覧数は3組でした。
いずれのお客様も本命物件として内覧されたわけではなく、「他の物件のついでに見せてもらおう」といった感じです。
内覧時の滞在時間は5~6分。
ひととおりサッと見て、「次の物件に行きましょう」と。
その後、お問い合わせの電話も少なくなり、年に2組あるかないかの内覧数でした。
この状況から年に100万円規模の値下げを通算で4年にわたり繰り返したのです。
最終的な着地点は?
価格改定の経緯は次の通りです。
当初売出価格 2,000万円
価格改定1回目 1,900万円
〃 2回目 1,800万円
〃 3回目 1,680万円
〃 4回目 1,580万円
最終成約金額 1,500万円
長期間売れ残っている=不人気物件というレッテルを張られたこの物件は、最終的に当初売出価格の500万円下げ、査定額でみると300万円を下げた金額でようやく成約に至ったのです。
木造住宅は、一年ごとにいくら減額するのか?
この事例の建物の場合、一年間で建物が幾ら減価償却(目減り)されていくかを、価格査定マニュアルで計算してみます。
前提条件として、建物所在地は北海道、構造は木造軸組工法、延床面積は132㎡(40坪)の中等級(標準的なグレード)の住宅で計算しています。
なお、土地代は含まれていません。
価格査定マニュアルによる計算結果は、築15年の時点で査定額781万円の住宅が一年後に査定額714万円(▲67万円減)、二年後に査定額633万円(▲81万円減)、三年後に査定額552万円(▲81万円減)、以降年に▲81万円が減っていきます。
時間が掛かれば掛かるほど、住宅価値が目減りしていくことから、不動産売却はいたずらに時間をかけてはいけないと言えます。
売り出し価格を高くして失敗した経験から、教訓として学んだこと
今回の例では、私自身の未熟さがもたらしたことでもあるので、大いに反省しました。
①不動産仲介業者として売主の意向に応えることの本質は、売主の希望価格で売り出すことではなく、最終的な売却益(手残り額)を高めるための行動を取ることである。
②時には、売主を思えばこそ、ダメなものはダメと言える勇気を持たなければならない。
③不動産の売買は、統計的にも最初に購入の名乗りを挙げた人が成約する確率が高いため、そのチャンス(旬)を逃してはいけない。
④査定額を無視して物件の価値に見合わない高値で売り出すことは、長期間売れ残るリスクへつながり、結果的に査定額を大きく下回る金額で売らざるを得なくなり損失が拡大する。
最後に
根拠に基づいた査定額を無視した価格設定は売れないリスクが高まります。
そして、不動産売却の価格設定を交渉事と考えないでほしいということです。
仮に、あなたが営業マンを説き伏せられたとしても、決してハッピーエンドな結末は待ってはいません。
大切なのは、実際に手に納める売却益を可能な限り高めることです。
皆様の不動産売却が成功裏に運ぶよう、これから不動産を売却しようとする人に、同じ轍を踏まないためにも心に留めていただきたいと願います。
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