【値下げに喝】不動産売却で値下げする前にやるべき施策を業界歴25年の宅建士が徹底解説!
中古住宅やマンションなどの不動産売却において、売り出し中の不動産がなかなか売れないと「価格を下げて、再チャレンジしましょう」と進みがちですが、その値下げは本当に必要なのでしょうか?
当社では、売主様に値下げの提案をする前に、まずは自分たちで作成した広告の見直しを行ないます。
そして、売却の依頼を受けた仲介業者として、「考えうるすべての営業施策を講じても、なお売れない状況にある」場合に、価格の見直しを働きかけます。
ここでは、家が売れない原因を短絡的に「価格」と決めつけずに、広告の見直しで不動産売却に成功した多数の経験をもとに、業界歴25年の宅地建物取引士が、不動産仲介営業の現場で培った「値下げする前にやるべき施策」の本質について紹介します。
1.その値下げは本当に必要なのか?
①値下げと値引きの違い
買主は、「少しでも安く購入したい」という気持ちから、価格の妥当性に関係なく、多くの場合値引きを要求してきます。
この値引き幅が常識の範囲内であれば、売主さんのお考えで値引に応じるケースもあるかと思いますが、ここでは買主が求める「値引き」の話ではなく、不動産物件の市場価値と売出価格のミスマッチにより、価格を下げないと売れないのか?という論点について解説します。
②不動産物件の市場価値と売出価格のミスマッチについて
ミスマッチが生じているから“売れない”状態に陥っているわけですが、真の原因を分析するには2つの視点が必要です。
ひとつは、当該不動産の価値や魅力を十分に伝えられているか?
もうひとつは、単純に価格が高すぎるという点です。
③なぜ不動産業者はすぐに価格を下げさせようとするのか?
念頭にあるのは「早期成約」。
この考え方自体は歓迎されるべきことですが、問題なのは早期成約に至らないのは「価格」が原因であり、売出価格設定は売主の責任、動きが悪いのはマーケットのせいにしている点です。
なぜ、自らの販売手法の見直し等に目がいかないのでしょうか。発想が自責ではなく他責であるところに問題があります。
④業者自らの行動を変えずに、売主に変革を求めるのはなぜ?
仲介業に対する解釈の差。
不動産業の歴史からして、そもそも、仲介業者に求められた業務というのは買い手を探すことです。もちろん今でもそうです。
しかしながら、わが国の人口減少にともない需要より供給が上回っている環境では、買い手の行動は、物件選定のためにじっくり時間をかけて比較検討するように変わっています。
これには、GAFAによる使いやすいインターネットプラットホームが確立され普及したことが大きく影響していることは言うまでもありません。
現代の不動産売却は、買い手にじっくり検討されても、それに耐えられる「内覧したくなる物件」としてアピールしていく必要があるのです。
買い手を探すために、不動産という商品の見せ方、販売の仕方を改良する。
このような発想を持ち、実際に日常の業務で取り組んでいる不動産業者は、まだまだ少数派です。
多くの業者の本音は…
自社所有の商品(分譲マンション)でもあるまいし、広告の出し方が云々言われても困る。
写真がどうこう、紹介文がどうこう言うなら、プロのカメラマンやライターに依頼しましょう。もちろん費用は売主さん負担ですよ。
だって、われわれは買い手を探すのが仕事ですから。
広告がどうこう言われても、それは業務の範疇外だから困ります。
ここまでひどくないにしても、理屈はわかっていても行動に移せない会社は圧倒的に多いわけです。
でも、売主さん大丈夫ですよ!安心してください。
当社のように広告宣伝費をいただくことなく、物件の付加価値アップのために広告づくりに熱心に取り組む不動産業者は全国に存在しています。
では、値下げする前に何をやらなければならないかについて、次の章でそのエッセンスをご紹介していきます。
2.一年以上の長い期間、売れない理由は2つ!
腕利きの不動産営業であっても、お問い合わせや内覧予約が入らない限り、打つ手はありません。
ズバリ、不動産が長期間にわたって売れない原因は、次の2つです。
①広告の問題
広告の問題と聞いて、あなたはどのようなことを想像しましたか?
・自社サイトだけでなく複数のポータルサイトにも掲載してほしい
・インターネットだけでなく、新聞広告や折り込みチラシも配布してほしい
ついつい広告の露出量のことを想像しがちです。
でも、私が問題提起するのは、「不動産広告の質」です。次の章で詳しく解説していきます。
②価格の問題
不動産物件の価値に見合った価格で売り出されているかがポイントです。
成約させるためには、 物件の価値=価格 の公式が成り立たなければなりません。
そのうち、特に早期の売却を目指す場合は 価値>価格 の状況を作ります。
そして、長期間不動産が売れないということは、 物件の価値<価格 の状態になっています。
もしも、査定額の見立てに誤りがあるのなら、すぐに修正する必要がありますが、売れない原因が価格だけの問題なのか、それ以外にもどこかに原因があるのかを把握することが大切です。
ちなみに、再建築不可や建物に欠陥がある場合でも、それが致命的な要因でない限り価格次第で売れていくのも現実です。
あくまでも、物件の価値=価格または物件の価値>価格の状態にあてはまれば、売れずに悩むといった状況に陥ることはないでしょう。
あなたの不動産が売れない状態が続いているのは、物件の価値と価格のバランスかも?と思われる方は、ご依頼されている不動産業者と相談してみることをおすすめします。
3.問い合わせや内覧が来ない不動産広告の実態
さて、前章で広告に問題があると主張しました。
どこの不動産業者もやっているようなありきたりな広告だからダメなのです。
さらに深く掘り下げて解説します。
ダメな広告をどんなに大量に投入しても、結果はよくなりません。
不動産広告なんて、どこも同じじゃないの?と思われるかもしれませんが、まさにここに答えがあります。
見方を変えれば、どこの不動産会社とも代わり映えしない「金太郎飴」みたいな広告では、あなたの売り出し中の不動産は類似物件の中に埋もれてしまっていると思いませんか?
残念ながら、大半の不動産業者は広告の質、つまり表現の仕方を工夫する方向に発想が向かわず、「売れなければ価格を下げる」というステップへ移ってしまう傾向があります。
不動産業以外の業界を見渡すと、多様化する顧客ニーズに合わせて、販売対象となる製品やサービスの訴求方法(広告)に対して、日々改善・改良を重ねています。
それに比べて、不動産の広告手法は、ここ15年間ほぼ変わっていません。せいぜい、写真の掲載枚数が増えたことくらいです。しかも各社同様に。
4.不動産広告のどこを改良すればいい?
では、旧態依然とした従来どおりの不動産広告において、どこがダメなのでしょうか。共通して言えることは、そもそも情報が少ないから、顧客に関心を持たれていないという事実です。
では、早速、当社が実践している具体的な改良施策を紹介します。
①売主の伝えたい情報をしっかり反映させる
例1)暮らしてみての感想や所感
具体的には、朝と夜、平日と休日、四季折々の状況などや日頃から利用している生活利便施設のこと、町内会やご近所付き合いの事など、所有者だからこそ知る暮らしやすさには、伝えきれないたくさんのことがあるはずです。
例2)リフォームや修繕の具体的な説明
例えば、「2018年の春にキッチン交換済み」ではなく、どのメーカーの、どんな製品に変えたかまで、しっかりと伝える必要があります。品番や型番まで記載出来たら尚可です。
例3)庭に咲く花や植栽の種類や名称
家庭菜園があるなら収穫できる野菜の種類や名称も広告で伝えたい対象です。
例4)施工会社のアフターサービス対応の良さ
新築したときのハウスメーカーや、日常的に依頼している修繕業者など、その建物のことを熟知している建築業者さんがいるかどうかは、買い手だって関心が高い部分です。
②物件の写真はきれいに魅力的に、見せたい部分をしっかり撮る
物件を紹介する写真は、記録写真ではいけません。
たまにスマホで撮った写真をウェブサイトに掲載している業者もおりますが、記録写真の次元では顧客の心に届くものは何も無いでしょう。
デジタル一眼レフカメラで広告に掲載するための写真が必要です。
写真撮影には、水平垂直がとれているか、適性露出の見やすい明るさか、美しく見える構図になっているか、見せたいものを納めているかなどなど、複数の条件を満たすレベルに達しなければ、お客様の心が動くことにはつながりません。
実際に、建築写真を生業とするプロが存在するわけですから、不動産広告用の写真と言っても奥が深いのです。
③上記①と②を編集して、カタチにしてお客様に届ける
売主から提供してもらった情報を、不動産業者が編集し、お客様にしっかり届ける作業ができているか。
キャッチコピーや紹介文の表現等を吟味して、「内覧してみたい」と思っていただける形に、不動産業者が編集します。この仕上げ作業が重要になります。
実践例をご覧になりたい場合は、関連記事のリンクを貼っておきますので、さらに理解を深めてみてください。
5.他社で売れなかった不動産も、これで起死回生の逆転劇に。
他社で数か月間売れなった中古住宅やマンションを、当社で媒介する場合は、次のステップを踏みます。
STEP① 査定のやり直し
STEP② 広告内容をフルリノベーション
STEP③ 値下げ前の価格に戻し、再募集を実施
売れずに困っている売主から相談を受け、当社で媒介することになった場合は、基本的に広告をフルリノベーションしたうえで、当初販売価格から再スタートします。
なぜなら、「この広告だと内覧したいと思う人は少ないはずだよなぁ…」と感じることが大半だからです。
そりゃあ、価格を下げて安くすれば売れるのでしょうけれど。
仲介業者=販売のプロとして、やるべきことができていない、ベストを尽くせていないのに、値下げに走るという発想や行動は、少なくともわが社の方針にはありません。
そして、最善を尽くしてみたけど効果が出ず、なお売却に難儀した場合は、売主に価格改定見直しの提案を行ないます。
ビジネス感覚としては、この考え方が自然ではないでしょうか?
価格を下げる前に、まずは「この広告はベストなのか?」
この自問自答があるから、わが社は売主オーナーの期待に応えられるのです。
実際の復活劇をご覧になりたい方のために、実践例を紹介した記事のリンクを貼っておきます。あなたの不動産売却にお役立てください。
あなたの不動産売却が成功しますように願っております。
関連した記事を読む
- 2022/01/28
- 2022/01/04
- 2021/12/23
- 2021/12/17