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2020年05月22日
不動産売却の知識とノウハウ

古家付で土地売却か、建物解体後に更地売却か、メリットが多いのはどっちなの?

相続した実家を処分するにあたり建築業者2社に助言を求めたところ、

「古家を取り壊して更地にした方が売れやすい」
「古くても建物付きの方が売れやすい」

と真逆な意見をもらい判断に迷っていますと、不動産売却を検討されているオーナーから相談を受けました。

ここでは、古家付の土地は「更地にして売却」と「建物付きのまま売却」を比べて、どちらが有利かメリットが多いのかについて、不動産取引の現場で起きていることを解説します。

はじめに

古い家がある土地を売るとき、買い手は既存の建物をリノベーションで再生させて使用するか、または取り壊して家を新築するかの二択になります。

 

一般的には、
「築30年を超えた家は、リフォームするにも多額な工事費が掛かるだろうし、古い家にそこまでしてお金をかける人なんて考えられない。誰も買わないでしょう?」

 

このように考える方は、きっと多いのではないでしょうか?

 

ところが、実際の不動産売買の取引では、売主が建物を取り壊す前提で売出したにもかかわらず、その古家を再利用するので壊さずに売ってほしいと要望されるケースもあるのです。

 

年々人口が減少し、買いたい人より売りたい人の方が多くなっている今、先入観や固定観念で売却チャンスの芽を摘んでしまうのはもったいないことです。

 

需要を押さえた、合理性のある販売計画を策定することは、不動産売却を成功させるための定石です。

築30年級の古い家に、果たして商品価値はあるのか?

最初に、築30年級の古い家が、実際に不動産売買市場で取引されるのか、売れているのかについて、3つの成約事例を見てみましょう。




事例①:築27年木造2階建の建物代金 310万円

※買主は自己居住用として取得し、屋根外壁の塗装、キッチン・浴室・洗面化粧台等の水廻り設備、床フローリング及び内装工事を全面的にリニューアルして、現在入居中。


事例②:築37年木造2階建の建物代金 200万円

※買主は自己居住用として取得し、1000万円を超える大規模なリノベーションを実施後に入居。


事例③:築32年木造平家建の建物代金 200万円

※買主は定年退職後に帰郷した際の自己居住用として取得し、屋根外壁の張替えのほか、キッチン・浴室・洗面化粧台等の水廻り設備等を300万円ほどかけてリニューアル。帰郷するまでの間は、貸家として現在運用中。



このように、土地代を含めない建物代金だけで見ても、中等級の住宅はおおよそ200万円から300万円価格帯で取引されています。

古家付土地を購入する人に見える共通点

古家付土地を購入される人たちには、その考え方などに共通点があります。

①昔と違って、今はリノベーションやリフォームに抵抗感はない

時代の流れと言えばそれまでですが、つい20年前までは新築神話が隆盛で中古住宅を買ってリフォームすることなんて見向きもされない時代だったのです。

TV番組の、劇的ビフォー・アフターやTVチャンピオンのリフォーム王決定戦で取り上げられたことで、「建物は不具合や痛みがあっても、適切に直せば使えるものだ」と建築業に従事しない一般の方々にも広く浸透しました。これらの番組の功績は大きいですね。



ちょうど10年ほど前からリフォームを進化させた「リノベーション」という言葉が使われ始め、今ではすっかりお馴染みになりました。



同時に、古い家を自分好みにカスタマイズでき、基礎や柱等を再利用することで新築と比較するとフルリノベーションは、工事費が20~25%程度縮減できるので、浮いた費用を設備や内外装のグレードアップに投入できるメリットを活かす若い人たちが増えてきています。

そのため、今やリフォームやリノベーションに抵抗感を持つ人は少なくなり、築年数の古い家でも一般に流通するようになったわけです。

②立地環境の魅力は古さをも圧倒する

立地環境によって、子どもの学校区や通勤のアクセスを優先する関係から、地域を限定、つまり立地を最優先事項に不動産の購入計画を立てる方がおります。


具体的には郊外にあるのではなく、病院や学校、商業施設が近くにある利便性の高い立地環境を指します。


その中には、「新築したいが、どうしても希望の地域から土地の売り出しがない」場合は、新築をあきらめて中古住宅をリノベーションする方向に切り替える人もいます。地域を決めて探す方の柔軟さが伺えます。

古家付きの土地を購入する側のメリット

次に、古家付土地を購入する側が、どのようなメリットを感じているのかについて紹介します。

自己居住の場合(実需)

先に少しだけ触れましたが、仮にフルリノベーションをする場合と新築する場合の工事費を比較すると、フルリノベは基礎や柱、屋根等の構造躯体が再利用できるので、工事総額が新築の20~25%程度まで縮減可能です。



フルリノベーションで自分好みにカスタマイズするメリットは、活かせるものを活かし、グレードアップやこだわりの部分に集中して自己の資金を投じることの経済合理性があることです。


また、おしゃれにフルリノベーションする人ばかりかと言えばそうではなく、「現状のままでも今の家より数段きれいなので、100万円ほどかけて軽微な修繕だけで済ませる人や、外壁の塗装や水回り設備を300万円程度でリニューアルするひともいるので、買い手により多種多様な直し方があります。

一戸建て貸家にする場合(不動産投資目的)

人口が減り、空き家が増加の一途をたどる現代ですが、アパートマンションの集合住宅に比べて、一戸建ての賃貸住宅需要はまだまだ高い状況です。

そのため、家賃収入を得る目的で、古い家を専門に購入する人たちの一定の需要があります。

古家付き土地で売却することの売主のメリット

①解体工事費の支出が無い

支出が無いほか、見積り依頼や工事業者への発注等に係る手間も要らなくなるので負担は軽くなります。


②土地の固定資産税は軽減を受けたままでOK

土地上に建物がある場合、住宅用地については、住宅1戸につき200㎡までの部分は1/6、200㎡を超える部分については1/3に軽減する特例が受けられています。

古い家が付いた状態で売却する場合は、土地の固定資産税の軽減を受けたままでいられます。

なお、1月1日現在で建物を取り壊され更地になっていた場合は、その年の土地の固定資産税は上記の軽減適用は受けられません。家屋はすでに滅失しているので、固定資産税はかかりません。


③建物の再利用は環境への配慮がGood

愛着や思い出のある家が、引き続き大事に使われることは、建物解体による廃棄物の削減やエコマテリアル(省資源)を通して、地球や社会に貢献しています。

古家付き土地で売却することの売主のデメリット

売主にとっては、買い手がついて引渡しを済ませるまでの危険負担の問題が気になるところでしょう。

古い家であっても、売却対象の商品であるわけですから、台風や地震、火災のリスクに備えて、建物には住宅総合保険(火災保険)をしっかりかけておきましょう。

もしも、保険が掛かっていない場合は、年払いでかまいませんので掛けておきましょう。

解体して更地で売った場合と比べて、気になる金額差は?

冒頭で紹介した成約事例のとおり、築年数が30年クラスの家でも商品価値があることがわかりました。

もしも、この商品価値に気づかずに建物を取り壊してしまったら、更地で売ることに比べて、どのくらい手残り額が変わるのでしょう?

仮に、建物の解体工事費用を100万円として、建物を取り壊して売却した場合は、古い家付きのまま売却した場合と比べると売却益で300万円~400万円の手残り減になる可能性があります。

築年数が古い建物が付いている土地は、建物を取り壊して更地で売るより、建物付きで売却したほうが得だと言える理由です。

古家付き土地売却の契約上の注意点を知っておこう

古家付き土地売却は、①引渡しまでに解体して更地で引き渡す方法と、②既存建物の再利用を希望する場合は、「建物の保証はしないけど、取得後に再利用するなら解体費用分を値引きしますよ」という同時二本立ての売り方になります。


それぞれの注意点を解説します。

①買い手が住宅を新築する場合

建物を取り壊すのは売買契約が締結した後になります。

実務的に詳しく述べると、手付解除や融資特約の期限が過ぎた後で、解体工事に着手します。期限を待つ理由は次の通りです。

 

■手付解除

手付解除の期限が到来するまでの間は、相手方は手付金を放棄して解約することができます。

手付金が売買代金の10%や20%など、それなりの金額であればいいのですが、少額であるならば期限が到来するまで待つことをおすすめします。

 

■融資特約による解除

融資特約とは、買い手が融資の一部または全部について金融機関の承認が得られなければ、契約を解除できる権利です。

融資不承認による解除となれば、売主は受領済みの金員全部を買い手に返還しなければなりません。

リスクヘッジのために、融資の正式承認が下りた日以降に、解体工事に着手するようにしましょう。

 

売買契約締結後で、かつ手付解除や融資特約の期限が経過した後に、売主は既存建物を取り壊し、更地の状態で買主に引き渡します。

 

【関連記事】

函館の解体工事がドウナンECO社に殺到する理由とは?


 

②買い手が建物を再利用する場合

冒頭部分で「古い家でもリノベーションの需要があって、売れていく」と述べたケースです。

そうは言っても、築年数の古い家のまま引き渡すことになるので、売主は建物の保証はしない=瑕疵担保責任は負わないことを契約の条件として、買い手にもその旨承諾していただきます。後々のトラブルを避けるためです。


この場合は、売主が既存建物を取り壊す必要が無くなったので、予定した解体工事費用分を減額(値引き)して売買契約を締結し、物件を引き渡します。

 
古い家がついた土地を売却する場合、この記事で紹介したことを念頭に計画を進められるとよいでしょう。
 


「古家付土地売却」と「解体更地」にした場合の固定資産税を比較してみよう

古家付で土地を売却することを検討する際に、念のために「建物を取り壊して更地に場合」と比較して、固定資産税にどのような差が出るのか調べてみましょう。

固定資産税や都市計画税等、公租公課の負担

古家付の状態と既存建物を取り壊した後で、固定資産税等の公租公課は、どのくらい差があるのでしょうか。


函館市内にある築49年の住宅を例に比較してみます。

【対象不動産の概要】
土地: 宅地 180.14㎡ 、第一種住居地域内にある宅地
家屋: 木造 192.55㎡ 、昭和36年新築、昭和46年増築



<現在の固定資産税額>
家屋の固定資産税24,417円
土地の固定資産税21,632円   合計46,049円…①



<建物取り壊し後の想定税額>
家屋の固定資産税   0円
土地の固定資産税77,230円   合計77,230円…②  差異31,181円


家屋に対する固定資産税は無くなるが、土地は住宅用地としての軽減が受けられなくなるので、結果として建物取り壊し後は31,200円の増額となった。

固定資産税は、土地上に住宅がある場合、住宅用地の軽減措置の対象となります。

今回のケースでは、土地は200㎡以下なので小規模住宅用地として固定資産税は課税標準額の6分の一に、都市計画税は3分の一に軽減されています。



建物を取り壊した後は、住宅用地としての軽減措置が受けられなくなり、土地の固定資産税は、次のように計算します。



更地の場合の固定資産税額計算:函館市の場合
固定資産評価額×70%=課税標準額
課税標準額×(固定資産税1.4%+都市計画税0.3%)=固定資産税額



(注)2019年12月現在で、函館市に隣接する北斗市や七飯町では都市計画税はありません。北斗市や七飯町の不動産でシミュレーションする場合は、上記計算式から都市計画税0.3%を外してください。

火災保険料の負担

次に、先述の建物の火災保険料をチェックしましょう。
保険内容は以下のとおりです。



木造 非耐火構造
面積 192.55㎡(58.13坪)

火災保険金額2,500万円(免責3万円)
地震保険1,250万円
保険料287,590円(5年間一括払い)

一年あたりで換算すると57,518円です。・・・③


固定資産税と火災保険を合わせて比較すると上記表のとおりとなります。



46,049円+57,518円=103,567円(①+③)

103,567円-77,230円=26,337円(差異)

∴古い家付きで売りに出す場合は、更地にした場合より26,337円の支出増となります。




今回の事例に使用した建物は、床面積が58坪もあるので保険料が57,000円ほど掛かっていますが、30坪~40坪程度の一般的な住宅だとすると、地震保険も含めて年払いで35000~40000円の範囲で収まります。

そうすると、年間でおおよそ1万円前後の差異ですね。


なお、損害保険会社によっては、空き家の場合は住宅用火災保険ではなく、一般物件扱いにすることもあります。会社によって規定や条件が異なると思いますので、詳しくはお取引中の損保会社にお問合せしましょう。



このほかにも、水道や電気、ガス等のライフラインについて、関係先に早めに休止届を出すなどして、基本料金がかからないような工夫が必要です。




通常の一般住宅の場合で、古家付で売りに出すことは更地にしてしまったときと比べて、年間で1~2万円支出が多い計算になりますが、「建物付きで売り出した方が販売チャンスあり」と割りきって、必要経費と捉えてみてはいかがでしょうか。

 

方向性が決まったら、最初の一手は隣接地所有者に購入を打診してみること

不動産売却の定石ですが、まず最初に、ご近所さんとしてお付き合いのある隣接地所有者に対して、購入を打診することです。実際の交渉事は、不動産業者にお願いするほうが心強いと思います。

お隣さんが興味を示したという前提で、仮に隣接地所有者が、「庭にしたい」、「駐車場を広げたい」、「親に家を新築して近くに住んでもらうつもり」等の希望から、古い家を取り壊して更地で売ってほしいと望むなら更地に。

一方で、「息子夫婦が既存の建物を活かしてリノベーションして使いたい」等の家を残してほしいという希望があれば古い家付きの状態で売却することが最善策だと考えます。

まとめ

国土交通省の住宅着工統計の推移をみると、1970年代をピークに年々減少の一途をたどっています。また将来を見据えても、わが国の人口減少や雇用問題、経済情勢を鑑みると、ジリ貧になっていくことが容易に想像できます。

いつの時代も新築のマイホームは、お父さんお母さんそして子供たちの念願であることに変わりませんが、もしかしたら働く人たち皆が新築の家に住める時代はもう来ないかもしれません。

しかしながら、「新築」は無理でも、自分たちの裁量の中で、念願のマイホームを手に入れたいと考える方も世の中には数多くいらっしゃいます。


近年、木造住宅建築の技術改良により、築年数が古くてもまだまだ立派に存在する建物が多くなりました。

築年数が古い家でも、その人たちなりに「わが家」を持ちたい需要は根強く存在しており、購入者視点では「土地値で古い家が付いているなら、お得!」と感じているのです。

 

【参考記事】

【成約事例付】築30年の一戸建ての価値、売却や購入に値するかどうかの話。

家やマンションを早期高値売却できるのは偶然の産物ではありません。

不動産業者にとっては価格を安くすれば労することなく早く売り上げが立ちますが、売主は果たしてそれでご満足ですか。
多くの売主は、適正かつ価値相応の価格、さらには少しでも高値で売却することを望みますが、それには媒介を委託する仲介業者に、物件が持つポテンシャルを最大限に引き出し、「価値を向上させるパフォーマンス=販売手法」なくしては実現に至りません。
家・マンションを高く売る方法7つの戦略ガイド【実例解説付】
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この記事を書いた人
藤原 滋己 フジワラ シゲキ
藤原 滋己
函館ラ・サール卒。商船系データ通信会社から建築・不動産産業界へ転身。宅地建物取引士+二級建築施工管理技士。ハウスメーカー勤務時代に、木造住宅の工事監督のちに住宅・アパート・店舗・寺院など様々な建築物の営業を経験しました。建築不動産の営業歴は通算25年。 安心かつ安全な不動産取引のために、これまで培ってきた知識や経験・ノウハウを、お客様へのサービスのために全力で提供します。遠慮なく何でもご相談ください。きっとお役に立ちます。
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