建物解体後に滅失登記が必要な理由と自分で申請手続きを行う方法について、函館市の不動産業者が解説します。
ここでは、滅失登記に関する注意事項と自分で滅失登記を行なう場合の方法について、函館市の不動産業者が申請書の記載例をもとに詳しく解説していきます。
滅失登記とは?
滅失登記(めっしつとうき)は建物を壊した時に必要な手続きです。
建物を解体し取り壊したあとに、法務局に申請しなければならない登記のことを言い、建物が無くなったこと(建物の抹消)を法務局の登記簿に記録します。
滅失登記の申請はいつまでに?
建物の全部を取り毀した後、建物所有者(登記名義人)はその建物の滅失の日から1カ月以内に、建物の滅失登記を申請しなければならないと、不動産登記法57条に定められています。
また、不動産登記法136条には、 この滅失登記を申請する義務があるのに、その者がその申請を怠った場合は、10万円以下の過料に処すとも定められています。
滅失登記は建物解体後一か月以内に申請しなければならないことを覚えておきましょう。
滅失登記を忘れた場合のリスクは?
滅失登記の申請を忘れた、つい怠ってしまった場合、次のようなリスクがあなたに降りかかりる恐れがあるで、注意しておきましょう。
1)滅失登記を忘れると、いつ過料に処されても文句は言えません。
2)建物の固定資産税が課税される恐れがあります。
建物を取り壊したのに滅失登記をしいなかったら、自治体から建物の固定資産税や都市計画税が課税される場合がありますので、ご自身で市町村自治体にご連絡する必要があります。(法務局で滅失登記済みの方は、自治体に連絡は不要です)
固定資産税は1月1日現在の所有者に課税されるという原則がありますので、特に注意しなければいけない時期としては年の瀬の12月でしょう。
建物の取り壊しが終わっているのに滅失登記が完了していない場合は、もしかしたら、あなたの手元に納税通知書が届くかもしれません。
官庁の御用納めの日に滅失登記の申請はギリギリ間に合ったけど、登記の完了は年明けになってしまう場合などでは、あなた自身が自治体の固定資産税課に連絡を入れておけば間違いないでしょう。
3)その土地に新築した建物の表示登記ができません。
建物を新築する場合、旧家屋の滅失登記が完了していなければ、新しい建物の表示登記が出来ません。
例えば、古い家を解体し取り壊したあとに土地を売却した場合に、住宅建設用に土地を購入した買主が建てた「新築の建物」が登記できなければ、買主は住宅ローンの融資を銀行から受けられなくなり、多大な迷惑を被り損害を受けることになります。
そして、売主さんの不法行為責任を問われる可能性も出てきます。
滅失登記をしようとしても、登記は即日で完了するわけではありません。そのときになってあわてないためにも、建物取り壊し後は滅失登記を申請しなければならないことをしっかり覚えておきましょう。
滅失登記を自分で申請する場合の手続き方法について
所定の書式に「どこにある、どんな建物を、いつ壊したか」などの必要事項を記入し、物件の所在地を管轄している法務局に申請手続きをすれば済みます。決して、面倒なことはありません。
登記名義人である建物所有者本人が申請すれば費用は印紙代のみ。また、物件所在地と離れた場所に住んでいらっしゃる方でも、管轄の法務局に郵送で申請手続きをすることも可能です。
手続き自体は決して難しいものではありません。
お手元に取り壊し対象となった建物の登記事項証明書が用意できたら、登記記録の記載内容を滅失登記申請書の適切な箇所に書き写していきます。
実際に、上の記載例をもとに記入上の注意点を解説します。
なお、登記申請書は法務局のホームページからダウンロードすることができます。以下にリンクを貼っておきます。
滅失登記申請書への記入上の注意事項
では、早速、記載例画像の中に青い字で※注と印をつけたところについて、丁寧に説明していきます。
(注1)建物が取り壊されたことの証明書です。
①建物を取り壊した解体工事業者(工事請負人)が法人の場合:
その法人の登記事項証明書の証明書および登記所で交付される代表者の印鑑証明書を添付しますが、法人番号がわかる場合は前述の法人登記事項証明書や印鑑証明書の添付が省略可能です。
②工事請負人が個人の場合:個人の印鑑証明書の添付が必要です。
(注2)登記の申請年月日を記載します。申請書を法務局(=登記所)に提出する日付を記入します。
(注3)申請人として、登記記録(登記事項証明書)の所有権に関する甲区に記載されている現在の登記名義人の住所と氏名又は名称を記載します。
登記記録上の所有者の住所が現在の住所と一致しない場合は、登記記録上の住所から現在の住所までの異動の経過が分かる、住民票の写し、または戸籍の附票の写し等を申請書に添付します。
なお、所有者が共有登記であった場合は、共有者のいずれか1名による申請で大丈夫です。
(注4)申請書の記載内容について確認や問い合わせが必要な場合に、登記官から連絡するための連絡先電話番号を記載します。平日の日中に連絡を受けることができる携帯電話番号などがよいでしょう。
(注5)不動産番号を記載した場合は、所在・家屋番号・種類・構造及び床面積の記載を省略することができます。
(注6)現在の登記記録(登記事項証明書)に記載されているとおりに記載し、「登記原因及びその日付」欄には、(注1)の建物滅失証明書に記載された建物の取り壊しの日を記載します。
その他の添付資料について
滅失登記の申請が受理されると、登記官は現地確認に出向きます。
そのため、現地案内図を添付するのがベターです。
また、建物取り壊しの「前」と「後」の現地写真も一緒に提出しておくと、より手続きがスムーズに運びます。
登記申請から完了までの期間
年末年始など特殊な場合を除き、滅失登記の申請から完了までに要する期間は、一週間程度が一般的です。
滅失登記の費用や相場について
滅失登記は所有者ご自身で行う方が大半です。
建物一棟につき収入印紙代1,000円です。
法務局の窓口で親切に教えてくれますので、面倒なことはありません。
お忙しい方は、土地家屋調査士への依頼をおすすめします。土地家屋調査士に依頼する場合の費用相場は、函館圏でおおよそ2~3万円程度です。
対象となる建物に、共有者がいる場合の注意事項
持分割合は別として、建物に共有者がいる場合でも、共有者の一名が代表者がして申請人になり、土地家屋調査士に委任状を交付すれば滅失登記登記手続きは進めることが可能です。
しかしながら、共有者全員の合意が得られたという証として、当社の場合は上の見本のように、各共有者から代表者あてに委任状を取りつけるようにしています。
委任状を取りつけておく目的は、将来起こるかもしれない紛争を防止するためです。親族同士なら紛争に発展する確率は著しく低いと考えますが、「念のため」ということです。
相続登記や住所変更登記をせずに滅失登記できるの?
相続する段階で、すでに建物を取り壊すことを決めている場合は、土地の相続登記は行いますが、建物に対して相続による移転登記は行いません。
このほか、登記上の住所と現住所が異なる、また結婚離婚によって登記上の所有者氏名が現在のものと異なる場合などでも、住所変更などの表題部の変更登記を行わずに、建物を取り壊し後に滅失登記を申請していることが一般的です。
滅失登記を済ませたら、いよいよ不動産売却へ。その前に読んでおきたい参考記事

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