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2019年12月18日
不動産売却の知識とノウハウ

築30年の古い家の価値と査定、中古住宅として売却可能かどうかの話。

「築22年を超えたら、査定はゼロに等しい」、「銀行の担保評価だって、せいぜい20年くらい?」といった言葉がささやかれますが、果たして本当にそうでしょうか。

築年数が30年を超える古い家が、なぜ売れるのか?

不動産流通の実態を踏まえて、家の価格と商品価値について解説します。

売り出し中の中古住宅が、なかなか売れない。このような現状に頭を抱える売主は少なくないと思います。
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1分でわかる!中古住宅が売れないときの解決策【4つのヒント】
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築30年住宅の成約事例

事例①:築27年木造2階建の建物代金 310万円

※買主は自己居住用として取得し、屋根外壁の塗装、キッチン・浴室・洗面化粧台等の水廻り設備、床フローリング及び内装工事を全面的にリニューアルして、現在入居中。


事例②:築37年木造2階建の建物代金 200万円

※買主は自己居住用として取得し、1000万円を超える大規模なリノベーションを実施後に入居。


事例③:築32年木造平家建の建物代金 200万円

※買主は定年退職後に帰郷した際の自己居住用として取得し、屋根外壁の張替えのほか、キッチン・浴室・洗面化粧台等の水廻り設備等を300万円ほどかけてリニューアル。帰郷するまでの間は、貸家として現在運用中。

 

成約事例でおわかりのように、土地代を含めない建物代金だけでみると、中等級の住宅は、主として200万円から300万円価格帯で取引されています。

仮に、建物の解体工事費用を100万円として、建物を取り壊して売却した場合は、古い家付きのまま売却した場合と比べると売却益で300万円~400万円の開きがでます。

これが築年数が古くても、建物を取り壊さずに売る方が良いと考える理由です。


では、実際にどの程度の需要があり、どんな建物が売れやすいかなどについて解説を進めます。

 

【関連記事】

古い家付きの土地売却は「更地」と「建物付き」のどちらが得か?

 

築30年を超える家が売れていく背景と理由

①リノベーションが追い風に

ハッキリ言って、20年ほど前までは中古住宅を買ってリフォームするお客様はほとんどいませんでした。皆一様に口を揃えて新築、新築、新築。。。でした。


ちょうど10年ほど前からリフォームを進化させた「リノベーション」という言葉が使われ始めましたね。TVチャンピオンのリフォーム王決定戦や劇的ビフォーアフターなどTV番組の功績が大きいところですが、今では「リノベーション」という言葉がすっかりお馴染みになりました。
 

「建物は悪いところがあっても、ちゃんと直せば使える」


建築関連の仕事をしている人にとっては「直せば、まだまだ使える」のは当たり前の感覚なのですが、一般の素人さんがこのような理解を示されることは、昔では考えられないことでした。時代の変遷ですね。

今や、リノベーションはトレンドといっても言い過ぎではありません。
 
古い家を自分好みにカスタマイズする。

基礎や柱等を再利用するフルリノベーションは、新築と比較すると工事費が20~25%程度縮減できます。浮いた費用を設備や内外装のグレードアップに投入できるので、そのメリットを活かす若い人たちが増えてきています。
 
こうしたことから、リノベーションに抵抗感を持つ人はずいぶんと少なくなり、築年数の古い家でも流通するようになったのです。

 

②住宅ローン償還年数が見直された

そして、リノベという流行ばかりではありません。
もうひとつの大きな要因があります。

それは、銀行の中古住宅に対する担保評価、具体的には「組めるローン返済年数」が大きく見直されたことが背景にあります。

20年前に中古住宅を銀行ローンを利用して購入しようとすると、
返済期間=25年―経過年数

これでローンの返済年数が決められていたのです。

当時、新築を建てるなら30年や35年の返済期間を組めたので、やはり皆新築に移行していきました。返済期間が長いと金利を含めた返済総額は大きくなりますが、毎月返済額は抑えられるので、そっちに行っちゃうわけです。

 

③自己居住用に実需で購入する人たち

 

もちろん、購入した状態でそのまま使用するわけではありません。しかし、改修工事のやり方は様々です。

内装の張替えと屋根外壁の塗装、水回り設備の一部リニューアル等で300万円程度の工事費を掛ける人

断熱・気密工事からやり直し、また間取りの変更や最新の設備機器も入れ替え、総額800~1000万円規模の工事を実施する人

・「現状のままでも、現在賃借している貸家より数段きれいなので、軽微な手直しで十分です。」と50~100万円くらいの予算で工事費を少額に抑える人

まさに十人十色です。買う人によって、満足度の違いや多種多様な考えがあるのだということがわかります。

 

④貸家として家賃収入を得る不動産投資目的で購入する人たち

賃貸経営といえばアパートやマンションなどの集合住宅を連想しがちですが、一戸建ての家を専門に取得して賃貸経営をされる方もおります。

世間は空室、空き家だらけでも、一戸建て賃貸住宅には根強い人気があるからです。

この場合は、事業目的なので安く買うことを条件にされる方がほとんどですが、一定の需要が存在します。

古い家でもリフォームやリノベーションを実施し、適切に直せば、まだまだ建物として使えることを多くの人が理解しているようです。

 

【参考記事】

相続した家を売るか貸すかの判断基準

⑤木造軸組(在来)工法はリノベーションの自由度が高い

部屋どうしの間仕切り壁を取り払って、広い空間にしたい。
仮に、このような要望があった場合、鉄骨造や鉄筋コンクリート(RC)造は構造上の制約があり実現が困難に近いのですが、それに比べて木造軸組工法なら増改築をはじめ間取りの変更がしやすいなど自由度が高いというメリットがります。

 

さらに、立地環境が買主にとって魅力的に思えた場合は、なおさら購入検討の対象となります。


ただし、中には構造耐力上、柱を完全に撤去できないケースもありますが、開口部を梁で補強し荷重を分散させることができれば、2室を1室に連続した空間にできてしまいます。


わが国では、減価償却における木造住宅の法定耐用年数は22年となっていますが、現実的な耐用年数は40年、50年くらいは平気で持つと思います。


ちなみに、私の自宅はたびたび増改築なり内外装の改修を行っていますが、築後45年を超えています。なお、アメリカでは築後100年を超える木造住宅が数多く存在しています。

 

⑥築37年以内の家は、新耐震基準である。

皆さんの中には、「建物の現行の耐震基準を満たしてなく、老朽化も進んだので、解体し取り壊した」とか、「旧耐震基準の建物の耐震診断を受けた結果、補強工事に多額な工事費がかかった」などを耳にしたことがあるかもしれません。


旧耐震基準とは1981年和56年)5月31日までに建築確認において適用された基準のことを言い、6月1日以降の建築確認において適用されている基準が新耐震基準です。旧耐震基準では震度5程度までを、新耐震基準は震度6~7程度の揺れでも倒壊しないような構造強度を想定しています。
 

では、この耐震基準の新旧の違いは、購入者にどのような影響を与えるかというと、ズバリ住宅ローン減税が使えるかどうかに関わります。

このメリットを活かすには、指定性能評価機関などによる耐震診断に合格し、「耐震基準適合証明書」が交付される物件を購入する必要があります。では、購入者にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。


耐震基準適合証明書が交付されると、こんなメリットがあります。

① 10年間で最大200万円住宅ローン控除
② 中古住宅購入時の登録免許税減税
③ 中古住宅購入時の不動産取得税減税
 

住宅ローン減税が最も恩恵を受けられるメリットですが、これは次のいずれかに該当しなければならないと規定されています。

① 非耐火建築物(木造):築後20年以内
② 耐火建築物(鉄骨造やRC造):築後25年以内
新耐震基準に適合することを証明するもの

 

実務的には、旧耐震基準の木造住宅は構造補強が必要となり、多額の工事費が掛かる場合が多いです。対して、新耐震基準の場合は、仮に耐震診断の結果、補強が必要となったとしても旧耐震基準の住宅に比べたら少額で済むでしょう。
 

現在、この記事を書いているのは2019年12月5日なので、昭和56年は今から何年前かというと、2019年-1981(昭和56)年=38年です。

築年数が38年より古い(=数字が大きい)場合は、旧耐震基準の建物になります。一方、新耐震基準だと耐震基準適合証明書が交付されやすいので、築37年以内の木造住宅が売れやすいと言えます。


但し、以下に掲げる建物は、築年数に関わらず、売却が困難と言えます。

 

築30年を超える家でもリフォーム実施済みなら、査定評価はアップする

 

一般的な家庭では、建物が築後15年を経過した頃から、屋根や外壁の塗装、海が近く傷みが著しい場合は屋根の葺き替えや外壁の張替えが行なわれる傾向にあります。

このような場合は、査定額には改修工事に要した工事費用相当額が上積みとして加算されます。

例えば、高齢の親のために「家の中の水廻り設備をリフォームし、段差解消や手すり設置などのバリアフリー工事を合わせて実施した」、「最近になって屋根と外壁を塗装した」などのように改修工事が行なわれている場合ですね。

リフォームを行なった当時に掛かった費用を教えていただき、減価償却の計算を行ない残存額を求めます。場合によっては、外観のデザインや形状が古臭くなく、購入者の好印象を与える要素があれば、これらも加点評価します。

この加点部分は、査定担当者の市場性や市場分析のスキルによって結果が左右されることがあります。

過去には木造一戸建て住宅のケースで、他社査定750万円で当社仲介成約額が930万円。あるいは、区分所有マンションでは他社査定900万円で当社仲介成約額1,180万円といったようにバラツキが出てしまうことがあります。

市場性の評価は、現時点では人工知能AIで測れない分野で、人間が行なう目利きに左右されることはやむを得ない現実です。

 

築30年木造住宅の価値、査定額は?

以下の前提条件で建物査定額を机上計算してみましょう。
計算は価格査定マニュアルを使用します。


<前提条件>
床面積115㎡(約35坪)の二階建て木造住宅で、一般的な布基礎、中級(標準)グレードの建物とします。
また、屋根外壁の改修工事は実施ナシ、これまでにメンテナンスやリフォームなどがほとんど実施されていないケースとします。さらに、外構工事は積算対象に含めず、建物本体のみの試算結果とします。
 



築年数   建物査定額
築40年    124万円
築35年    162万円
築30年    205万円
築25年    248万円
築20年    291万円
築15年    405万円
築10年    814万円
築  5年    1237万円

この試算結果をみると、築20年を迎えるまでは5年単位の減額幅が大きく、築20年を経過すると減額幅は緩やかに下がっていきます。木造住宅の減価償却期間に連動するかたちなのかもしれません。

それにしても、まだまだ十分に資産価値はあると言えます。

 

築30年の家を売却する際のQ&A

①雨漏りしているけど、直さなくても売れますか?

回答:直さなくても大丈夫です。

・雨漏りしているけど、修理はしていない
・床が抜け落ちそうだけど、放置している


直さないで売りに出すことに支障はありませんが、買主に対して、誠実に包み隠さず告知する義務があります。

さすがに築年数が古すぎるので、不具合がたくさんありそうで「売るのが不安だ」という方は専門家に診断してもらいましょう。

有償になりますが、建物状況調査(インスペクション)という制度があります。あわせて、買主が取得後にリフォーム、リノベーションを依頼しようと思う建築会社さんに積極的に内見に参加してもらうよう促しましょう。


工務店や建築関連の仕事に従事している方は、「悪いところは直せばいい」だけの話なので、一般の方が考えるほど「難しい問題」とは受け止めていません。

 
また、古い家を購入してリフォームやリノベーションを計画する人は、中古に対するストレス耐性が強い傾向にあります。活かせるものを活かし、大切に使っていただけるなら、省資源や地球環境にとっても歓迎すべきことです。

 

【建物状況調査(インスペクション)の関連記事】

インスペクションの概要と売主のメリットを解説

初めて中古住宅の建物状況調査(インスペクション)を経験した感想と得られたもの

 

 

②欠陥や不具合を直すために、多額の工事費用がかかりそうですが...?


回答:直すかどうかの判断は解体工事費が基準になります。

構造躯体のうち柱や梁、土台等、木部の腐朽は入れ替えにより再生することが可能であり、欠陥の度合いとしてはそれほど深刻なものではありません。

金額次第の判断になるので、建築家や工務店に相談し、工事見積りを依頼してみましょう。

 

ところが、不同沈下により基礎や床が傾いている建物を健全な状態に戻さなければならないケースでは、改善する工法は存在しますが、あらたに基礎コンクリートを打設し直すことも含めて、おそらく解体工事費の3倍から5倍、下手をすれば10倍かかるかもしれません。

この場合は、建物を取り壊して更地で売却することをおすすめします。

 

 

③法令違反がある建物でも売れますか?

回答:そのまま売ることは出来ません。

法令違反の内容や程度によりますが、例えば、敷地に対する建物建築のボリュームを規制する基準に建蔽率や容積率と呼ばれるものがあります。ところが、建物の床面積が規制の上限を超え違反建築状態にある建物は不動産会社が仲介の受託を受けないケースが多く、また銀行の住宅ローン対象外として受け付けてもらえません。

売主側で減築工事を行ない不適合を解消してから売却する方法はありますが、工事費用がどの程度かかるかで判断するのが望ましいと言えます。

 

 

まとめ

1.築年数が古くても家が付いているほうが売れやすい。

2.建物を解体して更地で売却した場合と比べると、場合により売却益に数百万円の開きが出る。

3.建物の保守管理状況が良ければ、さらに売れやすい。

4.リノベーションのトレンド時流、時代背景も追い風になっている。

5.但し、立地環境や建物の状態など個別要素によって判断の方向性は変わるので、ご自身の先入観で決めずに、地域の不動産会社に意見や助言を求めてみましょう。

 

 

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この記事を書いた人
藤原 滋己 フジワラ シゲキ
藤原 滋己
ハウスメーカー勤務時代に、木造住宅の工事監督のちに住宅・アパート・店舗・寺院など様々な建築物の営業を経験しました。建築不動産の営業歴は通算24年。 安心かつ安全な不動産取引のために、これまで培ってきた知識や経験・ノウハウを、お客様へのサービスのために全力で提供します。遠慮なく何でもご相談ください。きっとお役に立ちます。函館ラ・サール卒21期生。
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