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2020年05月22日
不動産売却の知識とノウハウ

【判例に学ぶ】事故物件による不動産売買のトラブルを避けるために注意すべきこと

事故物件とは、世に言う「訳あり物件」「いわくつき物件」で、不動産業界では「告知事項あり」また「心理的瑕疵あり」などと表現しますが、過去に敷地内や建物内で自殺や殺人事件、火災による死亡事故があった不動産のことを言います。

このような事情を抱える不動産を売却する場合、売主ならびに宅建業者は、当然に買主に対して告知義務を負います。

ここでは判例を通じて、いつまでさかのぼって告知しなければならないのか等、皆様の関心の高いところを解説します。

20数年前の自殺について説明義務を負わせた事例

20数年前に建物内で自殺があり、その後ずいぶん前に建物がすでに取り壊され更地になっている状態で売買が行なわれました。


宅建業者の担当者は売買契約締結後に、同業者から過去にその場所で自殺があった事実を知らされましたが、建物も取り壊され相当な期間更地であったことから話さなくても大丈夫だろうと判断し、予定通り代金決済と引渡しを進めました。



引渡し後に、当該土地において過去に自殺があったことを知った買主は、仲介した宅建業者を訴え、裁判所は『宅建業者として、売買契約締結後であっても、自殺という重要な事実を認識するに至った以上、代金決済や引渡手続きが完了してしまう前に、これを買主に説明すべき義務があった』と高松高裁は判示し、宅建業者の不法行為責任を認め慰謝料の支払を命じました。

 
 

宅建業者は、知り得た事実はすべて売買契約の当事者に告げる。そして、契約書(重要事項説明書)に明記する。

これが不動産取引でトラブルを回避するための大原則です。業務の基本に忠実であれば、このような事態を招くことはなかったでしょう。


 

今回の判例では、20数年前の自殺の説明義務を負わせたことが最大のポイントです。

 

この告知については時効の概念が無く、買主が「それを知っていたら購入しなかった」「購入の意思決定に大きな影響を与える要因」であったと主張される限り、売主ならびに仲介する宅建業者は説明義務を負うと考えた方がよいでしょう。

 

わが国では年間約3万人の自殺者が出ています。

そのうち建物内で亡くなっているケースが約7割とされているので、毎年2万戸の事故物件が増え続けていることになります。

このペースだと、やがて大部分の不動産が事故物件になるのでは?と危惧してしまいます。

 

17年前の火災事故について説明義務がないとされた事例

17年前に土地上の建物の火災事故により死者が出ましたが、その後建物が取り壊され、この土地は駐車場として運用され、譲渡が繰り返されてきました。

 

この土地を取得した買主は、17年前に火災で死者が出た旨を売買契約締結時に売主ならびに仲介した宅建業者業者から説明がなかったとして訴訟を起こしました。

 

裁判所が示した内容は次のとおりです。

・本件土地上で発生した火災事故は、売買契約を締結した平成23年からに既に17年以上も前の出来事であり、また火災発生後にすぐに建物が取り壊されており、売買契約締結当時は駐車場として使用されていた。

・売主は前所有者から告知をうけておらず、火災事故について知らなかった

・買主自身も取得してから1年半を経過するまで、火災事故の存在を知らなかった

 

これにより、『本件土地の売主および仲介業者は、通常の取引経過において、本件火災事故の存在及び本件火災事故により死者が出た事実を知り得たということはできず、上記事実の存否について調査すべきであったともいえない』と東京地裁は判示しました。

 

これは、売主ならびに仲介した宅建業者に責任がないとした判例です。



私が思うに、裁判所の判決は都会と地方都市や田舎では温度差があるように感じます。


事件が起きた場合でも、首都圏と違って地方都市や田舎では、なかなか風化、希釈化されません。先の高松高裁の判決では20数年前でも説明義務を負わせましたが、この事例における東京地裁は17年で説明義務ナシと判示しました。

 

もっとも、駐車場としてたびたび売買(譲渡)が繰り返されており、事件の告知が引き継がれてこなかった背景を鑑み、売主と宅建業者に調査義務、説明義務を負わせなかったということになるのでしょう。

 

さて、事故物件をめぐる不動産売買のトラブルでは、仲介する宅建業者の調査義務、説明義務に焦点が当てられます。

 

不動産という高額な財産を扱う仕事であるため、また宅地建物取引主任者から宅地建建物取引士へ昇格し、弁護士、司法書士、税理士といった「士業」として、ますます社会的責任が求められています。



しかしながら、不動産の実務家として私なりに不満に感じる現状があります。先述の調査について、いかにヌケやモレなく調べるか?ということです。

 

残念ながら、現状ではテレビドラマで観る刑事さんのように足を使って聞き込みするしか調べようがありません。

 

行政機関においては個人情報保護の盾が立ちはだかり、たやすく情報を入手できないことも悩みのタネです。

 

にもかかわらず紛争になると宅建業者の調査義務が焦点になるわけですから、なんとも言いがたい心境です。



消費者保護の観点から、かつ円満でトラブルの無い不動産取引を行なうためにも、宅建士に事件事故に関する範囲で調査権限を与えるような法律を作ってもらえないだろうかと思うこの頃です。

 

7年前の強盗殺人事件の不告知で売主に不法行為責任を認めた例

7年前に建物内で強盗殺人事件があったにもかかわらず、被害者の子である息子が、この事情を隠して売買に及び、買主から告知義務違反により損害賠償を求められた例です。

 

事件の事実を話すと売れなくなってしまうと恐れた息子が隠して売買に望んだわけですが、神戸地裁は『売主の告知義務違反を認め不法行為に該当するとし、過去に強盗殺人事件が発生していることを前提にした市場価格の差額と弁護士費用を加えた金額を損害賠償として認定しました。』

 

売主の利己的な都合で買主が損害を被った事案ですが、嘘をつく・隠し事をするのは人の道に外れることですから救済の余地はまったくありません。

 

ちなみに、事故物件としての価値と市場価格との差額は、不動産鑑定士による鑑定結果をもとに算出されます。



私個人の見立てですが、事故物件の売出価格や取引価格の動きを見ていると、殺人>自殺≧火災による死亡の順で、減額率が異なる気がします。

 

事故物件を売却する場合は、実勢価格つまり一般的に取引される市場価格より減額されるものだと理解しておきましょう。

まとめ

1.売主は知っている事実のすべてを包み隠さずに宅建業者に告知すること。そうでなければ、不法行為責任を問われます。

2.宅建業者は聞き取り忘れやモレがないよう、細心の注意をもって売主にヒアリングする。調査義務違反に問われないように、基本に忠実に。

3.病死であっても、ご近所さんが興味本位で話を大きくし、買主の不安を煽ることが往々にあるので、買主に対して誤認から来る不安を抱かせないよう、丁寧に説明することが望ましい。

 

事故物件に限らず、土地や建物の不具合や欠陥といったマイナス情報を、誠実に正直に告げるという意識が、売主ならびに宅建業者に今後一層求められると肝に銘じ、安心安全な不動産取引を心掛けましょう。

 

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この記事を書いた人
藤原 滋己 フジワラ シゲキ
藤原 滋己
函館ラ・サール卒。商船系データ通信会社から建築・不動産産業界へ転身。宅地建物取引士+二級建築施工管理技士。ハウスメーカー勤務時代に、木造住宅の工事監督のちに住宅・アパート・店舗・寺院など様々な建築物の営業を経験しました。建築不動産の営業歴は通算25年。 安心かつ安全な不動産取引のために、これまで培ってきた知識や経験・ノウハウを、お客様へのサービスのために全力で提供します。遠慮なく何でもご相談ください。きっとお役に立ちます。
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