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2020年09月07日
不動産売却の知識とノウハウ

中古住宅を売るときに、設計図面や確認済証(確認通知書)・検査済証が無い場合のリスクと対処法

平成30年4月1日より施行された宅建業法改正により、媒介契約締結時に建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんの有無を確認したり、また重要事項説明書において「建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況・建物の耐震診断に関する事項の記載ならびに説明が必要となり、従来より書類の重要性が高まりました。

 

ここでは、中古住宅を売買するときに、家の設計図面や建築確認通知書・検査済証が無い場合のリスク説明と対処法を解説します。

 

建物の設計図面が無い場合

中古住宅(既存住宅)の売買に際して、買主としては売主から図面を引き渡してほしいと望む人がほとんどです。

ところが、「親から相続を受けた築年数の古い家で、図面は見かけたことが無い」、「ずいぶん前に、中古の一戸建てを購入したけど、その当時は売主から図面を引き渡してもらえなかった」など、設計図を持ち合わせていない売主さんも少なくありません。

 

不動産業者が販売用の間取り図を作成する場合

売主の経済的な理由や販売開始時期を早めたいなどの事情により、建築士に依頼するまででの間、不動産業者が現地を採寸して、販売用資料としての間取りを作ることは多々あります。

 

建築士が書き起こす図面と比較すると精度は落ちるので、「図面と現況が異なる場合は、現況を優先します」という弁明はさせていただいています。

 

間取り作成が必要な物件の場合は、当社では2名で現地に赴き、採寸作業を行ないます。幸い、2名とも建築畑出身なので、精度の高い図面を書き起こしますが、あくまでの業務サービスの一環として行っていることなので、平面図に限り作成している感じです。

 

建築士に依頼して、現況図を作成してもらう場合

「図面がなくて大丈夫だよ」と言ってくれる買主さんであれば話は別ですが、そこは期待しないでおきましょう。

買主が希望する場合は、建築士に依頼して現況図面を作成してもらいます。図面作成の費用は、売主が負担します。

 

私のこれまでの経験上、建築士に配置図、平面図(1階、2階)と立面図の4枚を現況図としてを作成してもらった場合で、費用は10万円前後でした。建築士は2名で採寸、調査を行なったので安い方だと思います。

 

このほか、床面積が大きく、かつ鉄筋コンクリート(RC)造の住宅のケースでは60万円ほど掛かったこともあります。この時は大きな豪邸だったので特殊な例です。

 

すでに内装材や外装材で仕上げられた中古の建物において、仕上げ材を撤去して壁の中を確認するわけにもいきません。

 

建築士は現地で採寸し、仕上がり寸法からたどって壁厚を把握し、図面を書き起こします。このようなイレギュラーな条件で作成した図面であるため、設計図ではなく現況図とう呼び方をして誤解を招かないようにしています。

確認済証(確認通知書)や検査済証が無い場合

1.交付されていたが、紛失してしまった場合

分譲マンションの場合は管理会社を通じて建築確認に関する書類は確認できますが、戸建住宅の場合は売主が把握していなければ他にわかる人はいませんので、実物を見て確認したほうがよいでしょう。

もしも確認済証や検査済証が手元に無ければ、不動産業者が役所に出向き、建築行政課で「建築確認交付済証明」もしくは「検査済証交付済証明」を発行してもらいます。

また、これらの書類と合わせて、配置図などが記載されている「建築計画概要書」も入手しておきましょう。

函館市の場合は、交付手数料はいずれも有償ですが、数百円で済みます。

 

なお、現在、「確認済証」と呼ばれるものは、1995年4月30日以前は「確認通知書」と呼ばれていました。呼称が変わりましたが、同じ目的の書類です。

 

建物図面や建築確認済証、検査済証などの設計関連の図書は、不動産査定に多少なりとも影響を与えるほか、中古住宅を購入する買主の大きな安心につながる大事なことなので、大切に保管しておくようにしましょう。

 

2.完了検査を受けなかったので、検査済証交付証明が発行してもらえない場合

建築確認申請は行ったものの、完了検査を受けていなかった。
このようなケースは、少なくありません。

 

多くの場合、次のいずれかの理由によります。

 

①当時、家を現金で建てており、完了検査の合格した旨を銀行に提出する必要もないので、工務店さんが役所に完了検査を求めなかった。

住宅ローンを利用する場合は、融資実行前に必ず銀行に検査済証を提出する義務があるので、完了検査を受けるのがあたりまえです。

しかし、ごく稀ですが、住宅ローンを利用せずに現金で家を建てる人がおります。そもそも提出しなければならない先がないので、完了検査を受けなかったというケースです。

不動産業者でない限り、「完了検査に合格して検査済証を交付してもらっておかないと、不動産価値を低下たらしめますよ」と助言してくれる人はいないのかもしれません。

完了検査に合格していない(そもそも受けていない)ので、検査済証の存在が無いということです。

 

②建築確認申請の内容と現場の実態が異なるため、意図的に役所に完了検査を求めなかった。

このケースは違反建築の疑いがあるので、まずは確認申請どおりに建築工事が実施されているか、以下の点をチェックします。

 

・建物の配置が北側斜線に抵触しない、隣地との離れが確保されているか
・建蔽率オーバーや容積率オーバーなど床面積が指定の上限を超えていないか
・付属の建物が建築されていないか

 

上記はいずれも現地での計測や間取りソフトを用いて面積計算することなどで解明できます。問題点を正確に把握しましょう。

 

違反建築であるがために完了検査を受けていなかった場合は、次のようなリスクが潜んでいます。

・違反建築であれば、建物査定価格は減額される。
・買主は銀行住宅ローンを利用できないので、現金で購入してくれる人にしか売ることができない。
・買主が物件取得後に新たに増改築を行なおうとしたとき、建築確認申請が受理されない。

 

こうなってしまうと売却そのものが困難になる可能性があるため、事態を把握したらすみやかに、宅建業者は建築家(設計事務所)で協議・相談しながら打開策を考えます。

 

・現段階で完了検査を受けることができるかどか。
・増築などによる未登記部分を登記するかどうか。
・違反建築部分を取り壊し(減築し)、瑕疵のない状態にするかどうか。

 

費用負担の問題もあることなので、簡単に決断できないかもしれませんが、売却方針に関わることなので、多面的に検討し方向性を定めましょう。

 

年月が経過した後でも、建築確認申請を行ない、確認済証を交付してもらうことはできるのか?

確認通知書(確認済証)が無いことは、"違反建築"、"既存不適格"なのか?と聞かれたら、そうとは言えません。

新築や増改築の実施後、仮に10年、20年経過しても建築確認申請を行なうことは可能です。
但し、自治体の建築行政窓口により、申請を受けるかどうかは対応差(温度差)があります。

 

将来、あなたの所有する建物を売却することを想定して、買い手が不安を抱かぬよう、また不動産の商品価値を低下させないためにも、確認済証や検査済証を行政から交付してもらおうと考えたとき、注意しなければならないことがあります。

それは、建築基準法も改正が行われているということです。


例えば、2003年7月1日に建築基準法の改正により、住宅全体の計画的な換気を促進するために換気設備の設置が義務付けられることになりました。

つまり、2003年6月31日以前に建築された住宅を、後から確認申請するのであれば、換気設備を現行法に適合するよう改修しなければならないわけです。

 

理屈では確認済証が交付されていない既存住宅を、後から確認申請を行ない確認済証を交付してもらうことは可能ですが、前述のような設備の改修を伴うケースもありますので、まずは専門家である建築家、設計事務所に相談し精査してもらうことをおすすめします。

 

 

まとめ

家の設計図や建築確認通知書、検査済証などの書類は、本来であれば、売主である所有者が保管しているべきものなので、中古住宅を売却する準備の段階で書類の有無をしっかり確認しておきましょう。

紛失している場合は、書類の性格上再発行はできませんが、交付した証明書を建築行政から取得できるので、不動産売買の取引に支障がでることはありません。

しかし、理由があって検査を受けなかった場合は、トラブルの芽が隠れていることが多いので、不動産を売り出す前にしっかり対策を立てておきましょう。

 

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この記事を書いた人
藤原 滋己 フジワラ シゲキ
藤原 滋己
函館ラ・サール卒。商船系データ通信会社から建築・不動産産業界へ転身。宅地建物取引士+二級建築施工管理技士。ハウスメーカー勤務時代に、木造住宅の工事監督のちに住宅・アパート・店舗・寺院など様々な建築物の営業を経験しました。建築不動産の営業歴は通算25年。 安心かつ安全な不動産取引のために、これまで培ってきた知識や経験・ノウハウを、お客様へのサービスのために全力で提供します。遠慮なく何でもご相談ください。きっとお役に立ちます。
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