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2018年11月28日
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建物状況調査(インスペクション)の普及で中古住宅市場は拡大するのか!?|函館の不動産屋からの提言

既存住宅(中古住宅)の取引において、2018年(平成30年)4月1日より、宅地建物取引業者との媒介契約書面に「建物状況調査のあっせんの有無」が記載されることになりました。この宅建業法改正は、不動産の知識がない一般ユーザーが安心して中古住宅を購入できるよう、国は建物状況調査(インスペクション)や瑕疵担保責任保険加入を促し、中古住宅の流通・促進や中古住宅市場の活性化を図る重要な住宅政策として推進しています。

国がインスペクションに力を入れるようになったきっかけは?

この住宅政策推進のきっかけになったのは、欧米諸国と日本の住宅市場の歴然とした違いによります。国土交通省の資料によると、アメリカでは住宅市場の83.1%が中古住宅の取引で、イギリスでは87.0%、さらに日本では14.7%。わが国では先進諸国と比べて格段に中古住宅の取引が少ないことがわかります。


さて、アメリカでは中古住宅の取引全体の7割以上にホームインスペクションが実施され、すでに常識になっています。対して日本は、「戸建は20年経ったら建物価値ゼロ」と言われ、スクラップアンドビルドが繰り返されて来ました。これではいけないと考えた日本ではアメリカに倣って建物状況調査(インスペクション)の定着を進めています。ちなみに、建築業に携わる人間は20年しか持たないだなんて誰も思っていません。なお、当社が建物状況調査(インスペクション)を実際に体験してみて得られた感想は、こちらの記事でご覧いただけます。

中古住宅の売買においては引渡し後のトラブル回避、購入者の不安の払拭というメリットがあるので、インスペクションの普及は意義が大きいことです。しかしながら、果たしてインスペクションの普及だけで中古住宅市場は拡大するのでしょうか。

アメリカの住宅が築年数が古くても売れる理由

実はアメリカと日本では住宅に決定的な違いがあります。

かれこれ20年くらい前になりますが、私自身がアメリカの不動産視察に行ったときの話です。当時はサンフランシスコからシカゴ、ダラスにかけて住宅やマンション、商業ビルを見て回りました。確か、シカゴに向かう途中で中古住宅がオープンハウスをやっていたので内覧させてもらいました。

売り出されていた家は、築120年で2億円。湖畔を望む小高い丘に建つ、眺望の素晴らしい家でした。使われている木製建具(室内ドア)の一枚の小口が削れていたのを確認できたのですが、色の層が4~5つ重なっていたことを記憶しています。所有者が変わるたびに修繕されたためか、何度も塗装で上塗りするので幾重にも塗膜の層が形成されたのでしょう。

現地の不動産エージェントいわく、「このドアは100年も経ってるんだぜ!すごいだろ?」こんな感じです。新品の家具でさえ、長年使い古されて自然に年季が入ったかのように、意図的に塗装ムラやシミを作って販売するお国柄なのです。そのほうが売れるからです。



アメリカの住宅(中級グレード以上)では、床材は18mm以上の厚みがある無垢材のフローリング、建具は無垢材、壁・天井は塗装仕上げが普通です。外壁の仕上げは部分的に石やタイルを張り、それ以外はモルタルの上に塗装で仕上げていきます。

一方、日本の住宅の場合は、外壁は窯業系サイディングが主流で、床材は合板、建具は塩ビシートで形成された工業製品、壁・天井はビニルクロス張りです。

アメリカでもビニルクロスは使用されますが、商業施設、つまりコストをかけない建物の内装仕上げで使用されていることがほとんどです。


塗装は新品同様に復元できる利点を持っていますが、残念ながら日本の住宅でよく使われている塩ビシートに塗料はのりません。塩ビシートは時間の経過とともに表面が劣化します。この比較でわかるように、無垢材を使った建物は塗装で蘇らせることができ、工業製品で作られた住宅は年月とともに劣化し安っぽくなるわけです。

アメリカ人のお父さんはDIY(日曜大工)が好き?

イメージ的には休日にせっせと家の手入れをしているアメリカのお父さんはリスペクトされ、日本人のお父さんは家のことは何もやらないと非難されそうですが、アメリカ人が手入れを欠かさないには理由があって、次に売却する際に自身が買った値段と同じか、若しくはそれ以上に高く売れるという合理性があるからなのです。日本のお父さん、安心してください。家族想いだとかそうでないとかの次元ではありません。

中古住宅市場拡大のキーワードは?

先述したように、中古住宅の取引数より新築着工件数が多い日本ですが、良質な建物かと言えばまだまだアメリカやイギリスに遅れをとっているのが現状です。

中古住宅売買における「引渡し後のトラブル回避」、かつ「購入者の不安払拭」という大義は、インスペクションの普及によって果たされますが、中古住宅市場の拡大には“根元的な鍵”である「建物自体の価値」向上が最大のテーマと言えます。

この記事を書いた人
藤原 滋己 フジワラ シゲキ
藤原 滋己
ハウスメーカー勤務時代に、木造住宅の工事監督のちに住宅・アパート・店舗・寺院など様々な建築物の営業を経験しました。建築不動産の営業歴は通算24年。 安心かつ安全な不動産取引のために、これまで培ってきた知識や経験・ノウハウを、お客様へのサービスのために全力で提供します。遠慮なく何でもご相談ください。きっとお役に立ちます。函館ラ・サール卒21期生。
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