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2018年12月15日
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不動産売買における契約成立の有無と申込金の関係

気に入った中古住宅に、購入希望金額や手付金の額を記載した購入申込書に20万円を添えて不動産業者に購入申込書を提出。ところが、親の反対に会い、数日後にキャンセルを申し出ることに。すでに、売主から売渡承諾書が交付されている状態で、申込み金は返還されるのでしょうか。

売買契約の成立は、いつの時点になるのか?

不動産業者に中古住宅を案内してもらったお客様(買受希望者)は、気に入った物件があったので、購入希望金額や手付金の額を記載した購入申込書に20万円を添えて不動産業者に購入申込書を提出しました。売主は申し込み金額での売却を承諾して売渡承諾書を交付しました。

ところが数日後、買受希望者は親の反対を受けてやむなくキャンセルを申し出ましたが、売主は「買受希望者の希望金額で売渡承諾書を交付した段階で契約は成立している。申込金20万円は契約が成立した時点で手付金の一部になっているので、キャンセルするなら手付金を放棄してくれと」主張しました。

買付証明と売渡承諾書が相互に交わされた場合、この時点で契約が成立したと言えるのでしょうか?

 

民法の原則から言うと、売買契約は、売主の売却意思と買主の購入意思の合致があれば、契約は成立します(諾成契約)。しかしながら、不動産は他の商品と異なり高額であることや、民法のみならず宅建業法の適用を受け、その契約の内容も多岐にわたることから、契約の諸条件について売主・買主双方が合意して、はじめて契約が成立すると解されています。

裁判所は買付証明(購入申込)書の法的な意味合いについて、「一般に、買付証明書は、確定的に買い受ける意思表示をしたものではなく、単に、当該不動産を将来買い受ける希望がある旨を表示するものにすぎない」と判示しています。


ですから、買付証明を受けた売主が、売渡の承諾を一方的にすることにより直ちに売買契約が成立するものではないとしています。当事者間で合意された契約条件が記載された書面(不動産売買契約書)をもって契約が締結された時点ではじめて契約が成立したといえるわけです。

買付証明書と売渡承諾書の授受のみでは売買契約は成立していない

実際、われわれ不動産業者の実務においても、買付証明書と売渡承諾書が相互に交付された後に、重要事項説明書・売買契約書(案)・物件状況確認書(告知書)等、契約に関連する書類の雛形を作成し、売主・買主の書類確認を経て契約日時の設定を行ないます。

言うなれば、買付証明書や売渡承諾書が交わされた時点は、相互に売買することへの意思表示(スタート)であり、契約の諸条件や合意内容の確認という次のプロセスへ進むサイン(合図)にすぎず、この時点をゴール(契約成立)とは言えないのです。


今回のケースでは購入申込書を売渡承諾書が互いに交付されたものの、契約に向けての諸条件を詰める前の段階で親に反対さえ購入を断念し、キャンセルを申し出たわけで、この時点で契約が成立しているとは言えませんので、買主が購入申込みを撤回することに問題はありません。

売主の主張は妥当でなく、売主ならびに媒介業者は申込金20万円の返還を拒むことはできないことになります。

今回のようなテーマにおいて、過去に、大阪高裁をはじめ東京地裁など数々の判例がでていますので、調べてみるとよいでしょう。

なお、不動産買付証明書を提出する前段階で申込金を支払った場合のキャンセルは、申込み金が返還されるのか?について、こちらからご参照いただけます。

この記事を書いた人
藤原 滋己 フジワラ シゲキ
藤原 滋己
ハウスメーカー勤務時代に、木造住宅の工事監督のちに住宅・アパート・店舗・寺院など様々な建築物の営業を経験しました。建築不動産の営業歴は通算24年。 安心かつ安全な不動産取引のために、これまで培ってきた知識や経験・ノウハウを、お客様へのサービスのために全力で提供します。遠慮なく何でもご相談ください。きっとお役に立ちます。函館ラ・サール卒21期生。
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